10:30−11:00
内田浩樹 Sarah Haas Neil Birt(鳥取環境大学)
Helping Students Take Control of their
Non-understanding
概要
鳥取環境大学は2001年に開学し、今年度が完学となります。環境情報学部に環
境政策、環境デザイン、情報システムの3学科を設置しており、英語教育は、
いわゆる一般基礎科目として展開しています。コミュニケーション能力育成の
ための試みとして、Participation
Point Systemを開発・導入しました。これ
は、学生が英語を使用することにより評点を獲得することができる自己採点シ
ステムで、これにより授業内での積極的な英語使用が促進されました。また、
相手の発話が理解できない場合に、適切な表現で聞き返し、正確に情報を把握
することを援助するために、Classroom
EnglishをA3サイズの表現週として
まとめ、これをQuickLookと称して教材としています。これらの取り組みが教
室内にもたらした変化をご紹介致します。
11:00−11:30
佐藤 正教 (広島市立大大学院)
「英語教科の中・高移行時における学習ギャップ:英語教科書の定量分析を通じて」
概要
中学校、高等学校で使われる英語教科書の分析はこれまで様々な観点から多くされてきた。例えば、教科書に使われている題材(文化)分析、語彙・語法の分析、言語機能の分析、コミュニケーション方略の扱われ方の分析などである。外国語として英語を学ぶ学習者にとって教科書の果たす役割は大きく、こうした分析は英語教育に多くの示唆を与えてくれる。しかし、これらの教科書分析では、中学校、高等学校の教科書のいずれか一方を分析したものがほとんどであり、両方を分析したものは少ない。中学校と高校学校の連携はこれまでにもよく言われてきたことであるが、両方の教科書を分析し、教材という観点から連携を考える必要がある。
そこで本研究では、中学校三年生用の英語教科書と高等学校一年生用の英語Tの教科書を対象に、語彙・統語・リーダビリティの観点から分析を行い、その差異を明らかにすることとした。中学校の教科書に比べ、高等学校の教科書は難しいとよく言われる。そのギャップを感じるのは特に中学校を卒業したばかりの高等学校一年生である。高等学校一年生で履修する可能性のある科目はオーラルコミュニケーションTと英語Tであるが、中学校と比べて難しいと感じるのは、発表者が教育現場で体験した限りでは、後者だと思われる。そのギャップにより、英語嫌いや学習についていけない学習者が増えていると考えられる。中学校段階の学習事項が十分に身についていない学習者にとっては、なおさらである。現在までにまだすべての教科書分析を完了しているわけではないが、本研究発表では、パイロット的に実施した分析結果を述べ、今後の研究方法について言及する予定である。
11:30−12:00
佐藤 潤(広島市立大大学院)
「非英語母語話者同士のインターアクションに関する研究の実態調査」(An Investigation into the Researches on Interaction among
Non-Native Speakers of English)
概要
現代において、英語を「国際交流、娯楽、学会、ビジネス、教育などの場面において世界中で広く、頻繁に使用されている言語」と見なす見解は普及している。英語のこの世界的普及をKachru(1985)は三つのサークルで表現し、堀部(2002)は英語拡大の過程と現代における英語使用の実態を述べている。
英語の多変種化が進むと当然のごとく、非英語母語話者同士のインターアクションの機会は増え、これまでのように、英語母語話者によって使用される英語だけが絶対的な規範であるという見識も見直される必要があると考えられる。しかしながら、こういった状況にも関わらず、言語学、英語関係の研究では、未だに英語母語話者同士、あるいは英語母語話者と非英語母語話者同士のインターアクションの比較、分析が大部分を占め、非英語母語話者同士のインターアクションについての実証研究はまだまだ少ないと思われる。
本研究では、このような背景を基に、「非英語母語話者同士のインターアクション」についての研究実態を把握する為の第一段階として、過去約10年において、言語学、英語関係の主要ジャーナル誌に「非英語母語話者同士のインターアクション」についての文献が実際にどの程度投稿されているかということについての調査を行った。今回はその調査方法、調査対象ジャーナル、分類方法、調査結果、今後の方向性を発表する予定である。
13:30−14:00
高垣俊之(尾道大)
Englishesに慣れる重要性と実践報告
概要
日本人の英語学習者がノンネイティブの様々な英語に慣れ親しむ重要性は、これまでも指摘されてきた(e.g.
鈴木、1975;Honna & Takeshita、1999)。その一つの大きな理由は、英語は世界中でネイティブ・スピーカーのみならず多くのノンネイティブ・スピーカーによって使われているにもかかわらず、学習モデルは主に英米の英語であるからである。本発表では、コミュニケーションの言語的平等性と相互理解という視点からもノンネイティブの英語を適宜学習することが必要であることを指摘する。そして、ノンネイティブの英語に慣れ親しむための一つの実践報告を行う。2002年9月、ノンネイティブ・スピーカーによるContent-based
instructionが広島県の公立高校(スーパ英語高)で行われた。これは、公立高校の英語教育史において画期的な試みであったと考えられる。フィリピン人教師とインドネシア人の助手が「家庭科」を、オランダ人教師が「政治経済」を1年生対象にオール・イングリッシュで各11回教えた。毎回、生徒から授業のアンケートをとり、そのまとめた結果を報告する。
14:00−14:30
Roger
Nunn and Darren Lingley(Kochi University)
Curriculum
Development and Course Design: Introducing the EPIC Programme
Summary
This joint presentation describes the background, content and
philosophy behind the new English Programme for
International Communication (EPIC) at
Curriculum development projects in one area, while significant in their own right, can also have a huge impact elsewhere in the curriculum. The formative placement testing initiative in 2003 meant repercussions for the current 2004 curriculum in that students from different levels would now have different needs. Though there are a variety of English course options for the student body in general, adequate opportunities for higher-level students were found to be lacking. An intensive English programme was designed to address the needs of students who had successfully passed the top two levels of the English conversation course. Other objectives the EPIC programme aimed to redress included the low intensity of English study and poor coordination between classes for level and content.
In this description of the new EPIC programme, we will consider in detail its key design features. One feature is intensity of language study, which is set in the context of international standards. Another prominent feature of the EPIC programme is its interlocking content with each of the six courses taught with an aim towards an inclusive notion of language competence. Core skills courses are taught in tandem with applied content courses leading to a progressive recycling of grammar, vocabulary and other skills at different stages of different courses. This paper will also consider assessment as well as organization and administration aspects of EPIC.
14:30−15:00
岩井千秋(広島市立大)
「Levelt の発話産出モデルを基にしたコミュニケーション方略指導効果の理論化」(Specifying
the Issue of Teachability of Communication Strategies
in Reference to Levelt’s Speech Production Model)
概要
コミュニケーション方略(以下CS)研究は、第二言語習得研究(SLA)の理論的変遷を反映して、発話の産出結果に焦点を当てたプロダクト指向の研究
(product-oriented)とプロセス指向の研究(process-oriented) の両面から研究されてきた。90年台以降は応用研究に関心がもたれるようになり、例えば
Dörnyei (1995) の研究では、CS指導が数量的にも質的にも学習に好結果をもたらし、学習者の学習動機も高める効果があったと結論付けている。
一方で、発表者はこうした研究にはSLAの視点が十分に反映されておらず、CS指導効果を論じるにはより精緻な理論に基づいた実証研究が必要であると指摘してきた(例えば、Iwai
2001; Iwai & Konishi 2003)。このような指摘は、例えば Skehan (1998) や門田(2003)らの言語情報処理の観点からのSLA研究の問題点の指摘に通じるものである。
本研究では、Levelt (1989,
1993) のspeech production model をベースに、CS指導の是非を問うために必要な理論構築を試みる。その実証的根拠として、発表者が過去に収集・分析したデータを再分析した結果を発表する予定である。(参考文献の詳細は発表ハンドアウトで提示。)
15:20−16:40
パネルディスカッション 「英語カリキュラム改革の功罪―本音を語ろう」
広瀬浩三(島根大学)筏津成一(鳥取大学)松岡博信(安田女子大)
趣旨説明
昨年の山口大会では「中国・四国地区大学における現状と課題―TOEIC導入に関連して」というシンポジュウムで愛媛大、広島大、鳥取大、山口大の各大学から外部テスト(TOEIC)の英語教育の改革へのインプットとその問題点を報告していただいた (詳細は支部研究紀要第1号「特集」をご覧ください)。今回の討論では英語の新たなカリキュラムの試みに取り組んでおられる3名のパネリストからの発表を基に、カリキュラム改革によって何が変わったのか、また何が変化を阻害しているのかなど英語担当者の本音を語り、情報の交換の場としたい。